主治医のような社会保険労務士法人 Shujiinoyouna Labor and Social Security Attorney Corp

100名の壁を超えたら。「足し算」の経営から、「引き算」の組織論へ。

アートの視点

彫刻家、安田侃(やすだ かん)さんの作品をご覧になったことはあるでしょうか。 滑らかな曲線、触れたくなるような質感。そこには静謐な時間が流れています。
彼の彫刻制作のプロセスは、非常に哲学的です。 粘土をペタペタと貼り付けて形を作るのではありません。そこにある大きな石から、不要なものを削ぎ落としていく「引き算」の作業です。
「完成形は最初から石の中にあり、自分はそれを掘り起こす作業に過ぎない」 安田侃さんがそう語るように、本質的な美しさとは、何かを付け足した先ではなく、余計なものを取り除いた先に現れるものなのかもしれません。

経営の現場

この話を経営に置き換えた時、ハッとするものがないでしょうか。
創業期を経て、従業員数が30名、50名、そして100名と増えていく過程で、多くのものを「足し算」していないでしょうか。
トラブルが起きれば「再発防止策」という名のルールを足す。 新しい課題が見つかれば、「対策室」という名の部署を足す。 連絡漏れがあれば、「報告ライン」を足す。
これらはすべて、その時々の「善意」や「必要性」から生まれたものです。しかし、この足し算を繰り返した結果、組織はどうなったでしょうか。
意思決定のスピードは落ち、現場の自由度は下がり、組織図は複雑怪奇なものになってしまった。 まるで、粘土を無計画に付け足しすぎて、重心がわからなくなった塊のように。

引き算の美学

組織が100名を超えたあたりから、経営者に求められる能力の質が変わります。 それは「新しく始める力」以上に、「勇気を持ってやめる力」です。
形骸化した会議体はありませんか?
誰も読んでいない日報はありませんか?
承認のためだけのハンコ(承認プロセス)はありませんか?
これらを削ぎ落とすことは、決して「手抜き」や「後退」ではありません。 彫刻家が石の中から本来の姿を掘り出すように、組織本来の「しなやかさ」や「スピード」を取り戻すための、極めてクリエイティブな作業です。

パートナーとしての提案

「引き算」は、「足し算」よりも遥かにエネルギーを使います。 何かを始めることには誰も反対しませんが、何かをやめることには不安や抵抗が伴うからです。だからこそ、そこには経営者の強い意志と美意識が必要になります。
御社の組織図を、一度まっさらな目で見つめ直してみませんか? 削ぎ落とせる贅肉を見つけた時、そこにはきっと、創業に込めた本来の「美しい組織の姿」が眠っているはずです。
もし、どこからノミを入れるべきか迷われたら、壁打ち相手としてお使いください。 組織の美しさを取り戻す作業を、ご一緒できれば幸いです。